ギフト-NOVEL8

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 集中治療室から普通の個室に移された僕は、医師からの説明を受けていた。
 どうやら僕が意識を失った直後、緊急手術が行われたらしい。
 ちょうどその時、僕と同じ血液型を持った人が搬送されたからだ。
 残念ながら、すでにこの世にはいない存在となっていたようだけど。
 一か八かの賭けで、医師はその人の心臓と僕の心臓を入れ替え……つまり、移植したのだ。
 血液型は同じでも、身内ではない人……僕の体が拒絶反応を起こさないか、とても不安に思っていたらしい。
 手術は奇跡的に成功し、僕はICUに搬送されて術後の様子を観察されていたみたいだ。
 僕は疑問に思ったことを医師に告げた。
「あの、僕に心臓をくれた人って……誰なんですか?」
「詳しくは言えないけれどね……。」
 医師は辛そうな表情をしてこう言った。
「君と同じくらいの、女の子だったんだよ。」
「えっ……。」
 僕と、同じくらい……?
「交通事故に巻き込まれたらしくてね……。まだ若いのに、とても残念だよ……。助けれなかったことが……。」
 でも、その子が亡くなったおかげで、僕はこうして生きていられる。
 ふと、胸の鼓動が高鳴りだした。
 無意識に胸を押さえたが、それは苦しいからじゃない。
「どうしたんだい、まだ痛むのかい?」
「……いえ、違います。」

 とても、暖かかったから……。

 苦しくない、ただ僕を包み込んでくれるような、暖かさを、その鼓動から感じていた。




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