ギフト-NOVEL10
しばらく歩いていると、一際目立つ大きな木が立っているのが見えた。
「あれは……。」
記憶を手繰り寄せる。あの木はたしか、小さい頃……。
僕はその木に近づきそっと触れる。
「そうだ、僕はいつもここで……。」
スケッチブックを持ち歩き、ここから見える風景をいつも描いていた。
でも、ここは僕一人では来れない。誰かと一緒じゃなきゃ、昔の僕なら来れない場所。
「他に誰か……いたっけ……。」
足元にあるクローバーの山を見つめ、僕は無意識に四葉のクローバーを探し始めた。
(そういえば、小さい頃こうして四葉のクローバーを探してたっけ……。)
次々と見つかる四葉のクローバーに、僕は自然と微笑んでいた。
(どうしてそんなに見つけることができるの?)
「えっ……?」
ふと、誰かに声をかけられた気がした。だが周りには誰もいない。
「空耳……?」
クローバーの山の近くに綺麗に咲く花が目に入った。
「………。」
(花輪を作るのはわたしの方が得意だからね!)
「また……?」
でも周りにはやはり誰もいない。
「誰、だ……?」
でも、この声には聴き覚えがあった。
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