ギフト-NOVEL4

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 面接時間が過ぎたため、わたしはしぶしぶ家に向かって帰ることにした。
「もう少し、いろんな話がしたかったな……。」
 病院の廊下でわたしは看護婦さんたちが話している内容をこっそりと聞いていた。
 どうやら、もう彼の命はそんなにもたないらしい、ということを。
 それを聞いて後悔した。もっと話をしたかった、もっといろんな思い出を作りたかった。
 そして、わたしのことを思い出してほしかった……。

 うつむきながらとぼとぼと歩いているわたしは、周りの状況なんて見えていなかった。
「………。」
 手に持っている本の中から栞を取り出し見つめる。
 その栞には、昔彼が見つけてくれた四葉のクローバーが挟まっている手製の栞だ。
「本当に、なにも覚えてないの……?」
 わたしは自然と涙を流し、栞を再び本の中に入れ閉じた。
「わたしは覚えてるのに、どうして……なんで……。」
 涙は止まらず、しばらくわたしはその場に立ちつくして泣きじゃくっていた。

 涙を拭った後も、わたしはうつむきながら家路へと向かっていった。
 頭の中によぎるのは、小さかった頃に話した他愛のないおしゃべりや、あの約束……。
「………。」
 また、涙を流しそうになってしまう。




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